2020年2月26日
忘れることの怖さ
一昨日退院してからまだ2日しか経っていませんが、それだけの時間がありますと、もうすっかり自宅での生活に慣れるといいますか、感覚は元に戻るものです。
退院当日、翌日に関しては、久しぶりの我が家ということでの感慨深さもありました。当然かもしれませんが、そういう感覚は時間とともに薄れていき、元の生活に戻っていくものです。
僕の場合はまだ痛みもありますし、体力と呼吸機能も完全には回復していないので、100%元通りとはいえませんけれど、それでも少しずつ、入院前と変わらない生活へと。
上がらなかった腕もだいぶ上がるようになりました。
この日もウォーキングに出たのですが、昨日よりは疲れなくなっている気もします。
一日一日、回復して元通りの生活に近づいていくことは、本当に嬉しいことです。
でも…。
それと同時に、「忘れてしまう」ことが怖くもあるんです。
血痰が出てから精神的に苦しかった時間、それを通り過ぎて手術という決断をしたこと、そして入院と手術という初めての体験。
僕はその全てを忘れたくないと思っています。この記憶を、この経験をずっと忘れずに生きていこうと、そう思っているんです。
にも関わらず、元の生活へと戻っていくにつれ、その意識が薄れていくんです。
もしかしたらそれが当たり前なのかもしれませんが、忘却に抵抗しなければ、と思ってしまうんです。
三ヶ所の傷
きっとこの先、痛みもなくなり、体力も回復したら、ますます今回のことを僕は忘れてしまうと思います。
もちろん絶対忘れられない記憶もいくつかは残るはずですが、それでも忘れることの方が多いのではないかと。
むしろ、忘れることは生きていくうえで大切なことなのかもしれないですけどね。
そんな中、きっと消えることなくずっと残っていくであろうものがあります。それは、手術の傷跡です。
右側の腕の下、背中側に肺切除を行った傷。胸の方、乳首の脇くらいに胸腔鏡のカメラを入れた傷。そしてもう少し下にドレーンの傷。
お見苦しい写真で申し訳ありませんが、こんな感じで傷があります。
まだ抜糸前でして、三ヶ所ともにホチキスの針が入ったままです。ドレーンの傷のところは、糸もあります。
どの傷も完治はしていませんが、背中側の傷が一番治りが早いです。
きっと時間とともにこの傷も癒えていき、傷跡も薄れていくとは思います。ですが、なくなることはないと。
僕はこの傷跡を鏡で見るたびに、手術のことを思い出すはずです。
背中の傷は剣士の恥
退院時に、傷を毎日チェックするように言われました。渡された注意書きにもその記載があります。
赤く腫れたり熱を持ったりするようなら、すぐに連絡をして外来で受診するようにと。
ですので退院時から、一日に2~3回、傷のチェック。
と言っても自分でするわけではなく、基本は嫁にしてもらってます。で、僕自身も風呂に入るときなど、鏡でチェックです。
じっくり見てしまうと、ホチキスとかなかなかエグいんですけどね。できれば直視は避けたいところではありますが、そうも言っていられません。ちゃんとチェックして、ヤバそうなら診てもらわないといけないです。
一番背中側の傷は、綺麗なもんでして、傷跡もそんなに目立ちません。しかし胸の側、カメラが入っていた傷と、ドレーンの傷の周囲、この二か所はなんなく周囲が少し赤みがかっているので、注意が必要かもしれません。現時点で腫れているわけではないので、特に問題はなさそうですけれど。
そんな傷チェックの時間に、嫁が一言。
「背中の傷は剣士の恥」
あのゾロの名言を…。
俺、剣士じゃねーし。
傷もそんなに背中じゃねーし。
でも、なぜか少し悔しくなってしまった自分がいました。